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解離性同一性障害の当事者の記録

主観的な、DID患者としての日々の徒然です

幾つかの治療法〜⑤運動療法による疼痛マネジメント その2

DIDの疼痛はひとりひとり異なるし、私見だがDID患者の疼痛はきっちりと分類すべきだと感じている。痛いときには「この痛みはなんだろう」という当事者にしか出来ない熟考をその都度すべきである。急性の危険な痛みを心因性のものだと決めつけて重篤な疾患の治療を遅らせることは避けねばならない。

さてDID患者の多くはその子ども時代にカラダの痛みを訴えてもそれを直ぐには受け入れてもらえず結果我慢して過ごしてきた。その始まりの年代は幼ければ幼いほど、これからわたしが書こうとしているDIDにおける難治性疼痛症の頻度は増す。

意外な事実であるが慢性痛、つまり慢性的な痛みとは長く続く痛みのことを指すのではない。初発の痛みを脳が認識してのち、脳内で生じている複雑なメカニズムによりその初発の痛みが「なんらかの理由から」再発することがある。再発痛とは「もう痛くないはずなのに痛む」ということである。ここではこの再発痛を慢性的な痛みと定義する。

痛みのメカニズムの特徴のひとつに痛みへの脳内物質の反射的分泌というものがあるが、幼くして再発痛を繰り返しているうちにここら辺の反射的分泌はもはやなんの反射的作用もしなくなってゆく。

そのようにしてDIDは幼児の時代から「痛いの痛いの飛んでけー」の魔法を身につけるのだろうか。痛みを和らげる幾つかの脳内物質、それら脳内物質を反射的分泌するためのカラタのあちこちのホルモン分泌。DIDは四六時中起きる再発痛への対処で、生理学的にはまったくのミラクルな状態で生き続けてゆくと言っていい。

もちろんわたしはアマチュアであるし、医学というものは日進月歩。この記事に何かの間違いがあれば率直に指摘して頂きたい。解離と脳内物質についての医学論文に興味のある方はそちらを読まれる方が宜しい。

わたしが取り上げたいのはひとつのことである。

再発痛はたとえ再発痛であろうとれっきとした痛みなのだ。その医学職の相違から、内科、整形、神経、婦人科とドクターショッピングをしたのち、原因が見つからないという理由でそこかしこで患者は「気のせいですよ」と言われるだろう。

「気のせい」だとしても当事者は充分に痛い。精神科以外で飛び交う「心因性」という言葉に含まれる医師たちのメッセージは皆「我慢できるんじゃない?」であるし、当事者たちはじっさいにいとも簡単にそれを受け入れ長い年月を我慢してしまうのだ。

忍耐を美徳とする文化的背景が解離の疫学のひとつかもしれない。

健全な日常にも忍耐という名の解離はある。日常生活に於ける解離的な変成状態としてパトナムは幾つかの項目を挙げている(2001年、p256)。宗教に於ける転向心理、薬物による神秘的体験、嗜癖による自我の分裂、長時間の受動的テレビ視聴による誘発的行動、そしてテレビ以外のメディアのバーチャルリアリティによって開く窓。

わたし自身はこれらを解離的で病的だと否定し非難する気は全くない。今の時代、なんなら解離よりも身近な危険は溢れているのだ。癌死は2人に1人、交通事故死も然りである。

パトナムは日常生活の解離としてスポーツを特筆している。ではスポーツは危険か。スポーツはいけないのか。

わたしが言いたいのは、運動療法が運動によって解離を起こすのではないということだ。そしてDIDは解離を自ら起こしてきたわけではない。

もちろん先ほど「痛いの飛んでけー」の魔法と書いたがあれはむしろ人体のミラクルへの畏敬から書いた。数々の苦痛をDIDの人体は回避してきた。人体機能はいつもオートマチックにだ。痛みでは死ななかったのだ。解離も当事者には止められなかったのだから。

わたしが走り続ける理由はロマンチックに言えば自分を見つめるためである。自分の手足や自分の心臓の音を聞くためなのである。そうしてカラダ全体を自分の所有物だと正しく捉えるのだ。

利き足でない方の足が上がりにくいことに気づいたのは走り始めて1ヶ月のころだった。1キロを8分ほどのゆっくりペース。わたしはわたしの意思で走っている。走るだけ。一文にもならない。誰にも迷惑もかけなければ誰も得することがない。小雨ならばむしろ喜んで走る。何故だろう。雨の中を走るのが好きである。

いろいろなことを考えながら走る。わたしは走ると頭痛は消える。もちろんそんな論文はまだ読んだことがないから「走るのが効くよ」とここに書くわけにはいかない。

我慢も忍耐も辛抱も、じつのところわたしは大好物である。DID患者に「我慢しなくてもいい」と言ってはならない。我慢してなんぼの人生を歩んできたのだ。いきなり辞めろと言われてもやり方がわからない。

ランニングは我慢の辞め方を習得する方法でもある。疼痛マネジメントとしたのはじつはDID患者の疼痛を一切無くすことは無理かもしれないと思うからだ。

だけど「毎日走っています」というと何科を受診しても褒められますよ。これマジ効くよ。

おすすめでーす。