解離性同一性障害の当事者の記録

主観的な、DID患者としての日々の徒然です

芸術療法〜(31)海

海に入る。砂浜を水平線へ。じゃぶじゃぶ、じゃぶじゃぶ。しばらく歩く。潮の引いた海は至る所くるぶしほどの浅瀬ではあるが、前方も後方も確かにそこは海であり、右も左もそれは海であった。

わたしは足元の水面の揺らぎを見た。水面は揺れていた。不均一に多方向に。揺れては打ち合いぶつかっては広がった。さざなみは発展し進行した。それは掴み所なく。そして伸びやかに。

後ろはどうだ。わたしの後方の浅瀬もまた、そこは一面の水の紋である。よく見ると紋は連動している。はじめは小さな紋様が進むにつれて大きな紋様になる。水は育っているのか。それとも薄まってゆくのか。

水の紋がわたしの両くるぶしをぐるりと取り囲んでいた。いったい誰がこんなふうに海を揺らしているのかと、そんなことを考えながら耳をすまして風の音を聴いてみる。わたしは風を感じた。気がつけば風もまたわたしを包んでいたのである。