解離性同一性障害の当事者の記録

主観的な、DID患者としての日々の徒然です

芸術療法〜(23)降り積もる

友人が一緒に窯巡りに行こうと言った。窯はパン焼き窯ではなく器の方だった。友人は織部焼が好きでわたしも作家の失敗作だという織部焼の鉢をひとつだけ持っている。

織部焼のことは何も知らなかった。織部焼のあの独特の緑色やちょいちょいと金釘に描いた鳥文様を眺めていた。気になって調べてみたら織部焼の織部とは戦国時代の武将の名前だった。織部さんは織部なにがしではなく古田織部といった。織部というのはファーストネームだったのだ。

古田織部は40歳で茶の湯デビュー。遅咲きのアーチストである。しかし本職はお武家様なのだ。関ヶ原では東軍であったが夏の陣では豊臣の密告者として切腹をした。

織部焼は種類が豊富。青織部などは北大路魯山人も使った。青織部とな。織部は緑色のはず。あれこれ調べたところモダン織部なる皿を見た。白い皿にキウィソースのように緑の雫がランダムに垂れていた。

古田家は断絶したが織部焼は復刻した。今日スタンダードとされる瀬戸物の釉薬をいくつか眺めている。ハングリーで反骨な黄瀬戸や古瀬戸、モダンな志野と織部、イマイチよくわからない御深井(おふけ)。

先日友人と共に愛知県瀬戸市赤津地区へと出向いた。窯巡りの下見である。わたしの脳内に容赦なく降り積もる色と形。ミスター織部が生きていたら。降り積もるイメージ。釉薬の液溜まりが光を含んで美しく輝いた。