解離性同一性障害の当事者の記録

主観的な、DID患者としての日々の徒然です

芸術療法〜(19)土

手の中に入るほど小さくて四角かった。角が砕けていた。中庭の井戸の脇に水色の角タイルがごっそりと落ちていたのだ。ひとつひとつを手に取って、長いあいだ眺めていた。

タイルというものが土を練って釉を掛けて焼いた陶板であることを子ども時代は全く知らなかった。このポンコツのタイルたちは何のためそこにあるのかもわからなかったし、今もそれはわからないまま。

四角を描くのが好きである。不完全な円を描くと途端にアタマがイライラするがいびつな四角をフリーハンドで描くと逆にどこか気持ちが和らぐ。

数寄屋造の家屋には四角がふんだんにある。欄間や障子の桟。縦にスライスした竹を聚楽で丸くぬいた間仕切りの中央に数本。竹もその骨には四角がある。

あの日拾ったタイルの表面。乾いた土を指で拭うとぷっくりと膨れた水色が硝子のように透き通って光を通して美しかった。造作無く地面に捨てられた沢山のタイルたち。それは今まさに地面から掘り出されたかのようだった。そしてタイルはもとは土だったのだ。