解離性同一性障害の当事者の記録

主観的な、DID患者としての日々の徒然です

芸術療法〜(6)余白

プラウエンのケミカルレースはじっさいは刺繍作品で花も蔓も機械が描いている。ランダムに見えてもそこには法則性がある。酷く複雑な模様を謎解きしながら描いている。

ぱっと見は味気の無い冷めたような工業製品が安心なのはそれが決められた線で描かれた決められた顔の花たちだからだ。

花たちはみな一様に俯き加減。しかし立ち上がる花びらはそんなに柔ではなくポーズを決めて魅せる。次の段、花たちは一列に行儀よく斜め上を見ては首をかしげる。左右非対称の薄っぺらい花弁が風を受けて歪な弧を描く。ここは向かい風か?まるでラインダンス。脳内に刺繍針の軽快な機械音が響き渡る。

ペンと紙とわたし。線を繋げる、ただそれだけ。花たちはわたしに向かって微笑んだり憂いたり。花を描くことが愉しい。

ペンを置き、わたしは色鉛筆で色を塗った。花を塗り蔓を塗り手を止めた。少し考えて別の色を塗る。溶かして消えてしまう糸と糸のあいだのそこは余白だったのだけれど。