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解離性同一性障害の当事者の記録

主観的な、DID患者としての日々の徒然です

芸術療法〜(29)遠吠え

狼の遠吠えみたいにやってみようか。声楽教師が言った。やってみる。1発目は失敗。二投目やや良し。狼オオカミおおかみ。念じながら吠えてみる。なんとなくこれは遠吠えである。吠えることのなんと気持ち良いこと。

熊の足跡と爪痕で腰を抜かしたわたしは何故だか以前のように歌うことが出来なくなってしまった。声楽教師は言う。

なんていうか歌うってさ、特別なことじゃないわけ。息吸って吐いて、また吸ってまた吐いてさ。そういうのにただ声を乗せてね、こう遠くに飛ばしてるわけよ。おーい聴こえてるか、ってね。

鼻で息吸える?そう鼻で。鼻で吸うと息が背中の方に入るでしょう。あのさ、ひだりの鼻の穴で吸ってみて。左だけ。なんでかは知らないんだけどひたりの鼻の穴で息を吸うとリラックスするようにヒトのカラダが出来てるらしいんだ。可笑しいはなしだよね。

まだ背中痛い?一回インナーマッスル遣っちゃうと直ぐには元に戻らないよ。いいよ無理しない無理しない。思ってたより声出るようになったでしょう。大丈夫直ぐ戻るよ。

あのさ、これからもこうやってああ前もこういうことあったな、っていう場所に戻ることがあるかもしれないんだけど、例えば6年生になったのにまた3年生に戻っちゃった、みたいにがっかりしないって約束ね。マミちゃん出来るよね。頑張ろう。そうそう基礎トレだよ。

今日帰ったらYouTubeで誰かが歌を歌ってるやつ、他のヒトが歌を歌ってる動画観て真似してみて。観れない?なんでよ。‥‥そうか、気になるか、そうそう顔とかね、ドレスとかね笑。確かにイラっとくるやつ多いもんなあ笑。

声楽教師は哀しげに俯いた。いろいろいろいろ。わたしは目に涙が滲んだ。果たしてわたしは再びわたしの歌を取り戻せるのだろうか。歌うたいへの道のりは遠い。俺の遠吠えがいったい何処の誰に届くというのか。歌うことになんの意義があるというのか。