解離性同一性障害の当事者の記録

主観的な、DID患者としての日々の徒然です

幾つかの治療法〜⑤運動療法による疼痛マネジメント その1

DIDに限らず今の時代原因不明の痛みで病院通いをし続けている人は少なくない。DIDの治療法のなんやかんやを書こうと思うと「痛み」について書くことから全く遠ざかることが出来ない。ただし体のどこかに原因不明の慢性の痛みがあるからと言ってその原因がDIDであるとするつもりはないし、片やDID患者の痛みの全ては完治出来ないと言い切るつもりもない。

運動療法という呼び方が正しいものなのかがアマチュアのわたしにはまずわからない。

DIDの治療が何を目指すとしても日々の暮らし、日常生活の質を向上させることは何は無くとも必要である。

痛みを訴える患者に対して見者らはその専門性の違いから様々な鑑別を行う。

神経内科、神経外科などの神経生理学者は痛みは神経学的異常より起こる事態だとする。整形外科医は痛みを生じさせている筋骨格系の不具合を細密に観察検索する。

わたしたちは痛みが生じると先ずそこに手を当てその辺りの何かの損傷を疑う。先生腰が痛いんです。頭が痛いんです。

わたしの整形外科の主治医はたいへん勉強家で(大丈夫皮肉じゃないですよ、これ)、あるときわたしに興味深い説明をしてくれた。それは痛みには2種類の痛みがあるという話で、それは急性の痛みと慢性の痛みであるということだった。

損傷の痕跡、もしくは損傷の回復の痕跡が見られ、もう充分に健康体であるにもかかわらずわたしから「痛み」が無くならないのは何故か?この主治医は整形外科医なので自分の仕事はここまでである、と言い、貴女の痛みは慢性痛である、これは近未来の重症な疾病の警告でも、現在進行形の筋骨格損傷のいち症状でもない。これはいわば「疼痛症」という名の単独の疾患なのである。お話はそんな感じであった。

わたしがこの話のわかる整形外科医に著しく依存したことは言うまでもない。彼もまたわたしが痛いと言えば体のあちこちに出来る範囲でキシロカインを静注してくれたのだが、そんなことでDIDの治療は進むはずもなく、やがてわたしと主治医との短い春は終わった。わたしの痛みは益々増してゆくという事態を起こしてしまうのである。

これより少し時間を遡り、わたしのDIDを見出した内科のクリニックの主治医に掛かっていたころに、わたしは自分の近未来の疼痛症状を予見していたかのような細密な調査をしていたことがあった。

当時のわたしは両足首の関節痛で歩くことが出来なくなり自走は出来ないタイプの車椅子を購入して日常生活を過ごしていた。病名は幾つかの自己免疫疾患の疑いであった。

自己免疫疾患ってなんや?

内科のクリニックの主治医は元は大病院の麻酔科医だったのでこ難しい話がたいへん得意で(これは皮肉ですね、うん)、わたしは様々なレクチャーを彼から受けた。

わたしの足首は歩けないほど痛いけれと足首にはそもそも何があるの?

軟部組織だよ、痛みは炎症だよ、でもその類の炎症には損傷は伴わないことが多い。菌が入ったわけでもない、ウイルスでもない、自分で自分の細胞を攻撃しているんだ。

そのときの幾つかの自己免疫疾患の疑いは今では診断されたものもあるしステロイド治療も経験したが、何ヶ月か続いた足首の激痛はあるとき嘘のように消え、わたしはその時の車椅子は知人に譲ってしまった。

とはいえわたしにDIDであるがゆえの疼痛症状が消えたわけではない。次の記事では現在進行形のわたしの運動療法を具体的に書いてみたい。