解離性同一性障害の当事者の記録

主観的な、DID患者としての日々の徒然です

お知らせ

これまでfridayusaoのブログを読んでくださってありがとうございました。このたびブログを引っ越しました。相変わらずの偏屈で拙い文章ですがお暇な時にでも覗いてみてください!どうか皆さんお元気で! http://marihakobo.jugem.jp/

芸術療法〜(32)モズク採り

モズク採りが単純に脳に良いということではない。 わたしは沖縄でモズク採りをしたその日、浅い海でゆらゆらと繁茂するモズクを手でちぎって、そのままその場で食べたのである。例えば栽培農家がりんごやイチゴを観光客に食べさせるレジャーがある。これまで…

芸術療法〜(31)海

海に入る。砂浜を水平線へ。じゃぶじゃぶ、じゃぶじゃぶ。しばらく歩く。潮の引いた海は至る所くるぶしほどの浅瀬ではあるが、前方も後方も確かにそこは海であり、右も左もそれは海であった。 わたしは足元の水面の揺らぎを見た。水面は揺れていた。不均一に…

芸術療法〜(30)胡瓜

わたしは胡瓜がとても好きなので胡瓜を買った日は胡瓜のことをしばらく考えている。何故自分がこんなにも胡瓜が好きなのだろうということや、胡瓜ってどうしてこんなに美味しいんだろうとかそういうことです。 10年以上前のことだがわたしには胡瓜嫌いの友人…

芸術療法〜(29)遠吠え

狼の遠吠えみたいにやってみようか。声楽教師が言った。やってみる。1発目は失敗。二投目やや良し。狼オオカミおおかみ。念じながら吠えてみる。なんとなくこれは遠吠えである。吠えることのなんと気持ち良いこと。 熊の足跡と爪痕で腰を抜かしたわたしは何…

芸術療法〜(28)人形を作る

大量のワイヤーを頂いたのでワイヤーを骨にした人形を作った。昨日は這い熊を作った。這い熊というのは四つ足で踏ん張る野性味のある熊のデザインのことで、木彫りの熊デザインのひとつ。 最初に作ったのは二足歩行をする兎の人形だが大きな蝶ネクタイを付け…

芸術療法〜(27)眉(まゆ)

街角で、雑誌で、わたしは人の眉を見る。濃い眉、薄い眉。厳しい眉、優しい眉。眼のすぐ上にあって凛々しく眼球と連動して働く眉があり、おでこの真ん中で堂々と顔の1パーツとして独立を果たして、何事にも動じない眉がある。 四国の徳島には眉山という名の…

芸術療法〜(26)脱力

春の林道を1時間ほど走る。斜面に作られた段々をテンポ良く降りる。右左右左。左右に体をふりながら飛び上がっては脱力して降りる。ダンシン。思わず浮かれる。 僕のォうちの牛もォ、君のォうちの豚もォ、らららお洒落してェ、ららら踊ってるゥ。藤山一郎の'…

芸術療法〜(25)気象

天気図というものがある。ラジオから流れる数字を一覧表にせっせと記載する。終わったらそれを地図に記してゆく。風向は音符の羽根みたいなやつで風力気圧は数字をそのまま書く。 等圧線は大体この辺りかなというところにフリーハンドで緩やかな線を描く。こ…

芸術療法〜(24)顔

最近自分の顔を鏡で見ることが増えた。わたしは発声が暗いらしい。もっと明るいアの音を、イはイーとハッキリと。友人の声楽教師は鏡を見ながらやってみてと言った。 鏡の中には不自然に口角を上げた志村けんみたいな人がいた。そうじゃない、顎を引くの、友…

芸術療法〜(23)降り積もる

友人が一緒に窯巡りに行こうと言った。窯はパン焼き窯ではなく器の方だった。友人は織部焼が好きでわたしも作家の失敗作だという織部焼の鉢をひとつだけ持っている。 織部焼のことは何も知らなかった。織部焼のあの独特の緑色やちょいちょいと金釘に描いた鳥…

芸術療法〜(22)青色

浮世絵の刷り師たちは紺が高価だったのでオランダからの輸入の鉱物の青を用いたという。浮世絵は日本ではありふれた紙切れだったがある日浮世絵が割れ物の緩衝材として荷物に詰められていた。それはくしゃくしゃに丸められていた。浮世絵はいわば漫画のよう…

芸術療法〜(21)爪の形

長年だ。生まれてからずっとである。わたしは自分の手が嫌いであった。その反動だろうか。他人の手をつい見てしまうのだ。ゴツゴツした手、細く華奢な手。大人なのに小さい手、外見の割に大きな手。 かのショパンは一見ゴツくて小さな手をしていたそうだがそ…

芸術療法〜(20)固める

ニョッキを作る。大雑把に分けて北イタリアのニョッキはチーズソースで南の方のニョッキはトマトソースだと覚えているが、トマトがないのでチーズソースのニョッキを作る。 ニョッキは固める。蒸してほぐしたジャガイモ2個に小麦粉をカップ1ほど。塩を少々。…

芸術療法〜(19)土

手の中に入るほど小さくて四角かった。角が砕けていた。中庭の井戸の脇に水色の角タイルがごっそりと落ちていたのだ。ひとつひとつを手に取って、長いあいだ眺めていた。 タイルというものが土を練って釉を掛けて焼いた陶板であることを子ども時代は全く知ら…

芸術療法〜(18)旋律

今週から16世紀イタリアのマドリガーレ、カッチーニの”アマリッリ”を歌っている。まずは歌詞の読み方から。イタリア語の母音は日本とほぼ同じで5つ。マドリガーレって知ってる?友人であり今はわたしの声楽教師である彼女がある日わたしに言った。 マドリガ…

芸術療法〜(17)寄棟造

屋根は頭上にあって地面から屋根を見上げても屋根の全貌はわからないことが多い。坂の上から、または橋の上から遠くの家々を見る。屋根たちは空へと繋がる空中へとそのカタチの意匠を景観の一部分となって主張する。 正式な定義を知らないが感覚として寄棟屋…

芸術療法〜(16)ランドスケープ

景観ではなくランドスケープとしたのは景観はやや眺める側の視点や抒情を感じさせ、ランドスケープは景観を構成している特定の建物、道路、植物、人物等、それ自体に焦点を定めていると思うからである。 それでも今書こうとしているのはわたしにしか見えない…

芸術療法〜(15)切妻造

平入りという。切妻の斜め屋根の軒下に出入り口のある家のことである。京町家。長屋。数世帯が軒を連ねる。 わたしが憶えている平入りのその古い家は隣との仕切りは壁一枚であった。子ども時代、真夜中壁一枚挟んだ隣家で若い女が繰り返し殴られる騒動を聞い…

芸術療法〜(14)屋根

屋根を描くことに兎にも角にも手を付けた。いつ頃からだろうか。ある時わたしは屋根を見ていた。立ち止まり屋根を見たのだ。その日から今日まで、脳内には膨大な数の、わたしがこれまでに見た沢山の屋根メモリーが存在している。 わたしは何故それほどまでに…

芸術療法〜(13)明暗

精神科とは精神病院のことだが精神病院という言葉の響きはとても重い。単にそれは言葉の持つ印象であるがこの4文字に重厚な悲劇的イメージをわたしは抱く。 このところ芸術療法などと格好良い呼び名をつけて文章を垂れ流しているが要するにわたしという個人…

芸術療法〜(12)色

万年筆で描くことにこだわるのは何故だろう。万年筆が好きな理由をああでもないこうでもないと考えている。ペンという語の語源はラテン語で羽根、ペンナという語であるらしい。わたしは鳥の羽根ではなく金属のペン先で描いているけれど。 ペン描きには不備が…

芸術療法〜(11)空間

1月から月に2回声楽のレッスンに通っている。レッスンとレッスンの合間は自宅のリビングで1日に数回細切れの時間ひとり声出しレッスンを繰り返している。 声楽教師からその週に出されるわたしへのコマンド。それをクリアする。コマンドはそれほど多くはない…

芸術療法〜(10)律動

リズムという言葉は軽い。リズムでは良いと悪いとのどちらかになりますでしょう。良いか悪いかを見極めんとし、長いあいだわたしは目を凝らして物を見、耳をすましてじっと潜んでいた。 わたしは自分が見えている共同世界に含まれているとばかり思いこみ、わ…

芸術療法〜(9)形

編みビーズをはじめた。2号のテグスで2㎜のビーズの1㎜のビーズ穴を通す決まった単純作業の反復。4つのビーズを組み上げその四角を3×3すると四角ができあがる。 点を繋げてゆく。湾曲するテグスを一定の角度でそこにあるビーズに納めて進むのだ。ビーズはテ…

芸術療法〜(8)反復

数日前から江戸時代の絵師若冲の図録を模写している。若冲は八百屋だったので野菜や家禽を描いた。昨日から群鶏図を描いている。たくさんの鶏の頭を赤く色付けする作業はたいへん楽しいです。 色付けは軌跡を辿るのに似ている。何も考えずに塗り絵をする。物…

芸術療法〜(7)水色

わたしは何を求めて生きてきたのだろうか。わたしと外の世界を隔てる膜を通して、わたしはいったい何を見ていたのだろう。 一般的にDID患者は疎隔で離人、同一性が混乱しているとされる。しかしながら思い返してみればそれもこれも皆全ては一方的なわたしの…

芸術療法〜(6)余白

プラウエンのケミカルレースはじっさいは刺繍作品で花も蔓も機械が描いている。ランダムに見えてもそこには法則性がある。酷く複雑な模様を謎解きしながら描いている。 ぱっと見は味気の無い冷めたような工業製品が安心なのはそれが決められた線で描かれた決…

芸術療法〜⑸作為

人は何故絵を描いたり彫刻を拵えたりするのだろう。わたしは日常絵を描きたいという衝動を感じたことが皆無で絵画を鑑賞するべく出掛けていくこともなるべく避けて暮らしていた。 優れた絵画や彫刻作品からは作り手のエナジーが発せられている、という評価を…

芸術療法〜⑷題目

お気に入りの何枚もの古切手は全て友人から貰ったものだが、眺めていて心地よいそれら小さな切手の図案は絵画のようだ。1枚1枚切手の模写する。そんなやり方の美術鑑賞である。 わたしの親たちは絵画鑑賞が好きで裕福になり先ず購入したものは世界美術大全と…

芸術療法〜⑶嘘

いくつかの心を動かされる絵画や彫刻作品をじっくり鑑賞するとそれが痕跡や傷跡に似たものを発しているように思えることがある。それはただ単にわたしはそうした分野の作品に心を動かされる傾向を持っているという事実である。 白い紙に万年筆でジーっと線を…

芸術療法〜⑵線を探す

今年の秋の沖縄旅行でわたしは毎日海を見た。満潮の海や漣の海、日の出やサンセット。わたしの滞在したうるま市勝連は太平洋に突き出した半島で、景色の何処かに常に海が紛れ込んでいる場所だった。 海には心が癒されると言う人はとても多い。果たしてそうだ…

芸術療法〜⑴鬼胎として

鬼胎という言葉は聞き慣れない。鬼胎とは文学用語ではなく医学用語で、不健全な増殖をする胎細胞を指す。 DIDの自己開示を妨げる力動はたいへん強い。それを発するな、それを他人に告げるな。その警告は内なる声であり、わたしはわたしのその声のはじまりが…

幾つかの治療法〜⑦芸術療法

DIDの回復について、当事者と当事者の家族、また治療者とではそれぞれが異なるイメージを持っている。 当事者は今まで通り何人かの自分のままで生きていきたいという思考をいつまでも捨てきれない。家族は治療が進めば愛する人の奇異な部分が少しは人並みに…

幾つかの治療法〜⑥転地療養

俗に田舎暮らしが疲れた脳に良いと言うが、わたしはじっさいに田舎暮らしをしてみるまでそんな定石には反論していた。コンビニ&古本屋依存症。賑やかな街が大好きなのだ。わたしは街灯の無い場所が怖くてたまらなかった。 転地療養の定義は日常を総替えする…

幾つかの治療法〜⑤運動療法による疼痛マネジメント その2

DIDの疼痛はひとりひとり異なるし、私見だがDID患者の疼痛はきっちりと分類すべきだと感じている。痛いときには「この痛みはなんだろう」という当事者にしか出来ない熟考をその都度すべきである。急性の危険な痛みを心因性のものだと決めつけて重篤な疾患の…

幾つかの治療法〜⑤運動療法による疼痛マネジメント その1

DIDに限らず今の時代原因不明の痛みで病院通いをし続けている人は少なくない。DIDの治療法のなんやかんやを書こうと思うと「痛み」について書くことから全く遠ざかることが出来ない。ただし体のどこかに原因不明の慢性の痛みがあるからと言ってその原因がDID…

幾つかの治療法〜④心理カウンセリング

厳密な線引きが出来ていないままページを重ねている。まあでもどんどん書く。 いわゆる精神療法と呼ばれるものの総称をカウンセリングと言ったりすることがある。カウンセリングには肯定したり励ましたりするイメージがある。しかし実際には肯定や励ましが無…

幾つかの治療法〜③認知療法

認知療法の手法は様々であるが、市販されているこれが認知療法であるとされるテキスト類は主に専用の用紙に単語や文章を書き出さねばならず重篤な状態で寝込んでいる患者のアタマや体にはまず難しい治療である。 その上自ら書き出した行動記録等を提出しそれ…

幾つかの治療法〜②筆記療法

DID患者がその治療に筆記療法に取り入れようとしてもなかなか上手くいかない理由が幾つかある。そのひとつが強いストレスに長い時間晒されてきたという体験、つまり心的外傷(トラウマ)そのものの持つ性質である。 単発的な悲しい出来事は心的外傷(トラウマ)…

幾つかの治療法〜①薬物治療

パトナムは薬物治療を補助的治療と位置付けている。これがDIDには薬が効かないという定説である。柴山雅俊に至っては「解離への治療的接近」と題している。では「治療的接近」でない「接近」とはいったいなんだろうとふと考えたりする。 わたしの場合は薬物…

どんなことが治療を妨げるのか〜主導権を巡る争い

DID治療における主導権は常に患者の側にある。そもそも如何なる疾患に於いても患者は治療における自己決定権を持っているが、精神病はそれが一筋縄ではいかない。 少し考えればわかる事だ。統合失調症患者に昏迷や錯乱が生じるなら正常な判断力はそのとき失…

どんなことが治療を妨げるのか〜治療同盟とはなにか

わたしは治療同盟という用語はパトナムの本で初めて知った。しかしそれ以前にもわたしの主治医はそれらしいことを診察の終わりにやっていたような気がする。 簡単に言うと主治医と患者とのあいだで交わされる約束である。治療に於ける契約のようなものだ。文…

どんなことが治療を妨げるのか〜診断の受容がむつかしいのは何故か

DID患者が診断を受け入れることには単純に自分がこれこれの病気に罹っているといった病識を持つこと以上の、DID患者に特異な脳内の力動があることについて書きたいと思う。 パトナムはその著書でDID患者はその治療期間中、つまり診断され寛解するまでの長い…

どんなことが治療を妨げるのか〜DID患者はどんなふうに信頼関係を学ぶのか

DID患者と診断されてもされていなくても日々の生活を侵食してくる様々な症状から回復していくには長いプロセスが必要となる。 わたしの場合、出生時からの長期間の解離のミラクルが孤立無援で生き長らえる唯一の手段であった。大人になり治療が始まる。たと…

除反応とはどんなものなのか

DIDの治療に除反応がある。簡単に言えば記憶を取り出して整理することだ。 その夜わたしは17歳だった。父は酷く酔っていた。父は手には包丁を持っていた。父がわたしを追い回す。抵抗していたはずのわたしは一転父に向かって殺るなら殺れと言う。父は殺しは…

転移神経症とはどんなものなのか

DIDの症状に転移神経症がある。陽性転移は恋愛のようであり、陰性転移では虚無や絶望を共有してどちらも患者と精神科医双方の感情を掻き回し、コミニュケーションを滞らせ、関係を複雑にする。 私なりの考えだが、患者に転移を起こさせないような精神科医は…

そして精神病院へ通い始めたころのこと

脳への刺激を避ける。車のクラクションと町の喧騒。甲高い話し声と絶え間無く続くテレビコマーシャル。そういうもの全てが我慢ならない。 主人とわたしは3人の娘を連れて転居した。知人のつてで山に近い場所の一戸建ての借家を借りて移り住んだ。 当時わたし…

35歳〜DID患者になるまで②

ナルコレプシー? 二人目のわたしの主治医もまた内科の開業医であった。年齢はわたしの一回り上。彼はスキーの上級者であった。初診日、彼の右腕は肘から先がギプスで覆われていた。雪山を滑っていて滑落、骨折したという。 転院して間も無くわたしは高熱を…

35歳〜DID患者になるまで

調子はどうですか? 仕事を辞めたころこんな風に挨拶されることがよくあった。この日本語のニュアンスは明解。どこか悪い所は無い?である。もっとわかりやすく言うと普通じゃない感じ。大丈夫? 変な感じになって無い? 解離性同一性障害としてのわたしの不…